こんにちは。京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科です。
インプラント治療を受けた後、なんだかぐらつく気がする、以前よりも動く感じがするといった症状を感じていませんか。インプラントのぐらつきは決して珍しいことではありませんが、放置すると深刻な問題へと発展する可能性があります。
インプラントがぐらつく原因は複数存在し、それぞれに応じた対処法が必要です。
今回は、インプラントのぐらつきを放置するリスクや適切な対処法・予防策などをご紹介します。
インプラントのぐらつきの原因
インプラントのぐらつきには、いくつかの原因が存在します。以下に、インプラントのぐらつきの原因を解説します。
オッセオインテグレーションの不良
インプラントは、インプラント体とあごの骨がしっかりと結合することで固定されます。オッセオインテグレーションとは、インプラント体と骨が結合する現象を指します。
結合が不十分だとインプラントは骨にしっかりと固定されず、ぐらつきが生じます。骨との結合不良の原因は、手術時の感染・過度な負荷・患者さまの糖尿病や骨粗鬆症などの全身の健康状態・喫煙習慣などが挙げられます。
手術直後から数か月の間は、骨結合が完成する重要な期間であり、この時期に適切なケアを怠ると結合不良を引き起こす可能性が高まるでしょう。
インプラント周囲炎による骨吸収
インプラント周囲炎は、インプラント周辺の歯肉や骨に起こる炎症性疾患です。天然歯で起こる歯周病と同様のメカニズムで進行し、細菌感染により歯肉の腫れや出血が起こり、進行すると周囲の骨が溶けます。
インプラント周囲炎が進行するとインプラントを支える骨が失われ、結果としてぐらつきが生じます。インプラント周囲炎は初期段階では自覚症状が少ないため、定期的な検診を受けていない場合、気づかないうちに進行するケースが少なくありません。
口腔内の清掃不良や喫煙・糖尿病などの全身疾患が、インプラント周囲炎のリスク要因となります。
上部構造やアバットメントのトラブル
インプラントの上部構造である被せ物やアバットメントの緩みも、ぐらつきの原因となります。インプラント体には問題なくても、その上に装着される被せ物が緩んでいる場合、インプラント全体がぐらついているように感じることが多いです。
放置すると被せ物の破損や脱落につながる可能性があるため、早期の対処が必要でしょう。
過度な咬合力
インプラントに過度な咬合力が加わることも、ぐらつきの原因となります。歯ぎしりや食いしばりや硬い食べ物を頻繁に噛む習慣がある場合、対合歯との接触が強すぎる場合などが該当します。
過度な力が継続的に加わると、インプラント周囲の骨に負担がかかり、骨の吸収が進行するリスクが高いです。また、インプラント体そのものや上部構造にも影響を与え、破損を引き起こす可能性もあるでしょう。
インプラントがぐらつく状態を放置するリスク
インプラントのぐらつきを、少しくらいなら大丈夫と軽視して放置することは避けましょう。以下のような深刻なリスクが生じる可能性があります。
インプラント周囲炎の進行と骨吸収の拡大
ぐらつきを放置する最も深刻なリスクは、インプラント周囲炎の急速な進行です。ぐらつきがある状態では、インプラントと歯肉の間に細菌が侵入しやすくなり、感染リスクが大幅に高まります。
細菌感染が起こると、周囲組織の炎症が拡大し、骨吸収が加速度的に進行します。初期段階では軽度な骨の吸収だったものが、放置するとより広範囲にわたって骨が失われ、最終的にはインプラントの完全な脱落につながるかもしれません。
一度失われた骨の回復は困難であり、再治療時には大掛かりな治療が必要になる場合も少なくありません。
隣接歯への悪影響
ぐらついているインプラントの周辺では、細菌の増殖が活発になります。細菌は隣接する天然歯にも悪影響を与え、歯周病を引き起こしたり、悪化させる可能性があります。健康だった隣接歯まで失うことになれば、治療範囲が拡大し、ご自身の負担も大幅に増加するでしょう。
また、噛み合わせのバランスが崩れることで、口腔機能全体に影響を与える可能性もあります。
全身への影響と合併症
口腔内の慢性的な感染は、全身の健康にも深刻な影響を与えます。インプラント周囲炎によって細菌や炎症性物質が血流に乗って全身に回ると、心疾患・脳血管疾患・糖尿病の悪化・誤嚥性肺炎などのリスクが高まるでしょう。
なかでも、高齢者や基礎疾患をお持ちの方は、これらの合併症が生命に関わる重大な問題となる可能性があります。口腔の健康は全身の健康と密接に関連しているため、インプラントの問題を軽視しないことが大切です。
治療費用の負担増加
早期に対処すれば簡単な処置で済む問題も、放置すると複雑化し治療費用が大幅に増加します。インプラントの除去や骨移植・歯肉移植・再埋入といった複数の手術が必要になれば、初回の治療費を上回る費用がかかる場合もあります。
治療期間も長期化し、ご自身の身体的・精神的負担も増大するでしょう。仮歯の使用期間が延長されることで、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
審美面・機能面に支障が出る
ぐらついているインプラントは、見た目にも影響を与えます。とくに、前歯部のインプラントの場合、ぐらつきによって歯肉のラインが不自然になり被せ物の位置がズレると審美性が大きく損なわれます。
また、しっかりと噛めない状態が続くことで、食事の制限が生じ、栄養摂取に影響を与える可能性があります。発音にも影響が出ると、日常生活の質が低下するでしょう。
インプラントがぐらつくときの対処法
インプラントのぐらつきを感じた際は、適切な対処が必要です。自己判断せず、専門的な診断を受けることが最も重要です。
速やかに受診して精密検査を受ける
ぐらつきを感じたら、まずは施術を受けた歯科医院、または信頼できる歯科医院で精密検査を受けましょう。レントゲン撮影により骨の状態を確認し、必要に応じてCT撮影で三次元的な評価をおこなうことが多いです。
検査では、インプラント体の位置、周囲の骨の状態や上部構造の適合性などを確認します。併せて、噛み合わせの状態や歯周ポケットの検査をおこないぐらつきの原因を特定します。早期発見により、より簡単で効果的な治療が可能になるでしょう。
上部構造の調整・交換
被せ物の緩みが原因の場合、再固定や調整により改善が期待できるでしょう。アバットメントのネジを締め直したり、必要に応じて新しい被せ物への交換をおこなったりします。
また、過度な咬合力が原因の場合、噛み合わせの調整が必要です。噛み合わせる歯の調整やインプラント上部構造の形態修正により、適切な咬合力に調整します。上部構造やアバットメントのトラブルは、短期間で問題を解決できるケースが多いです。
インプラント周囲炎の治療
感染が原因の場合、まず徹底的な清掃と抗菌治療をおこないます。軽度であれば非外科的治療で改善可能ですが、進行している場合は外科的処置が必要になります。再生療法により、失われた骨や歯肉の回復を図る必要があるでしょう。
インプラントの除去と再埋入
骨の結合に問題が出ている場合、インプラントの除去が必要です。除去後は感染のコントロールをおこなって、骨の回復を待ってから再埋入を検討します。骨移植が必要になるケースも多く、治療期間は長期化する可能性が高いでしょう。
代替治療法の検討
再埋入が困難な場合、ブリッジや入れ歯などの代替治療法を検討します。患者様の口腔状態、年齢、全身状態を総合的に評価しながら、治療法を選択します。
インプラントを長持ちさせるための予防策
インプラントの長期的な成功には、適切な予防策の実践が不可欠です。以下の対策により、ぐらつきのリスクを大幅に軽減できます。
適切なセルフケアをおこなう
インプラント周囲の清掃には、インプラントの形状にあった用具を使用することが重要です。インプラントに合った歯ブラシや歯間ブラシ・フロスを適切に使い分け、細菌の蓄積を防ぎましょう。
特に、インプラントと歯肉の境界部分は、細菌が蓄積しやすいため、丁寧な清掃が必要です。電動歯ブラシの使用も効果的で、手磨きでは除去困難なプラークの除去が可能です。セルフケアに不安がある方は、適切な方法を歯科衛生士から指導してもらうと良いでしょう。
定期的なメンテナンスを受ける
3〜6か月に一度の定期検診とプロフェッショナルクリーニングは、インプラントの長期維持に不可欠です。歯科衛生士による専用器具を使った清掃により、日常のセルフケアでは除去困難な汚れや歯石を除去します。
定期検診では、レントゲン撮影による骨の状態確認や歯周ポケットの測定・咬合チェックなどをおこない問題の早期発見に努めます。また、患者さまの口腔状態やリスクファクターに応じて、個別のメンテナンス方法を提案してもらえるでしょう。
トラブルのリスクが高い方は2か月に1回などの高頻度で受診するよう指示されることが多いです。状態が安定している方は6ヶ月に一度など、一人ひとりの状態に合わせて歯科医師が設定します。
生活習慣の改善
喫煙はインプラント周囲炎の最大のリスクファクターです。ニコチンにより血流が悪化し、組織の治癒能力が低下します。免疫機能が下がるので結果として、細菌感染のリスクも高まるでしょう。
そのため、インプラント治療を受ける際は、禁煙が必須条件となります。インプラント手術後は、極端に硬い食べ物の摂取は控え、過度な負担をかけないよう注意しましょう。バランスの良い食事を心がけて、口腔組織の健康維持に必要な栄養素を摂取することが重要です。
また、ストレスは歯ぎしりや食いしばりの原因となり、インプラントに過度な負荷をかけます。適度な運動や十分な睡眠・リラクゼーション法の実践により、ストレスの軽減を図りましょう。
全身疾患の管理
糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患は、インプラントの安定性に大きく影響します。疾患をお持ちの方は、かかりつけ医との連携により適切な管理をおこないながら、口腔の健康維持に努めることが重要です。
まとめ
インプラントのぐらつきは、放置してはいけない症状のひとつです。原因は多岐にわたり、骨の結合不良やインプラント周囲炎・上部構造の問題・過度な咬合力などが考えられるでしょう。
放置すると骨吸収の進行や隣接歯への悪影響はもちろん、治療費用の増大などのリスクを伴います。ぐらつく症状を感じた際は、早急に歯科医院で精密検査を受け、原因に応じた適切な治療を受けることが大切です。
また、日頃からの適切なセルフケアと定期的なメンテナンスを受けて、しっかりと管理することがインプラントの寿命を大きく左右するでしょう。インプラントを長く快適に使用するためには、継続的なケアをおこなうことが不可欠です。
インプラント治療を検討されている方は、京都府京都市左京区にある医療法人社団 京都下鴨ライフ歯科・矯正歯科・小児歯科にご相談ください。
当院では、一人ひとりのライフステージに沿った歯科医療を提供できるよう努めています。小児・成人矯正や予防歯科、虫歯・歯周病治療、ホワイトニングなどさまざまな診療に力を入れています。